3/11(土)

 最近はギターを手に取ると隙あらばClimb The MindかGlemlinばかり弾いてしまう。フレーズのレパートリーが少しだけ増えた。「Yes I Know,My Life Is Melting For My Job」はいつまで経っても指が追いつかないしタッピングは鳴らない。徳島ラーメンの箸が異様に重かった後に教えてもらったそのフレーズ、あれはいつだったろうと古いiPhoneに入っている動画を探してみたらもう3年も前の出来事だった。3年かかっている。3年かかった、何か聞き覚えのあるフレーズ、なんだったろう。10年かかって壊した、だった。ギターを始めた頃もどんなに難しいのかもわからず身の丈にあわない曲を練習していた。原点回帰?ベランダでたばこを吸った後に隣人がベランダにでているような音が聞こえた。文句言われるかもしれないとびくびくしている。

 ベランダの「最後のうた」が好き。2019年の春頃、滋賀での会社の研修が終わって大阪へ同期の人と戻る中で、一人だけ帰路を変更して京都にベランダのライブをみに向かった。磔磔だったろうか。開演時間には間に合わなさそうで走って向かっていたら、通りすがりの人に「めちゃ急いでるやん」と言われた。そりゃ急ぎますよと思いながらその言葉は駆ける速度に影響を及ぼさなかったのでドップラー効果が起きていた、ような気がする。息を少し切らしながらみたライブで、「最後のうた」がとてーも良かったことを覚えている。その後のホムカミもよくてその後の物販で、ライブで聞いて覚えていた歌詞を伝えてこれが入っているのどれですかと尋ねたら全て新しいアルバムの曲だった。後で知ったけど、全部日本語歌詞なのはあのアルバムが初めてらしかった。その日から最後のうたが好き。昨日最初のフレーズを真似してみた。こんなだったのか。解放弦使ってる。解放弦の魅力、アルペジオの合間に鳴る解放弦のあの揺れ、あれは一体何。

 健康診断を受けてから一週間たらずの先週の火曜日に電話がかかってきて、血液検査の数値が異常であると伝えられた。肝臓の数値が異常だったらしく、生返事を繰り返していた僕に電話先の人は少し興奮気味に、基準値が30くらいのところ600とか1000とかなんですよと伝えてくれた。余りの外れ具合に電話を受けていた食堂で600?と言いながら笑ってしまった。翌日に仰々しい封筒に入れられて送られてきた検査結果の書類には本当に基準値の20倍や30倍以上の数値が記載されており、誤診としか思えない数値に見るたびふふふと笑っていた。去年の夏頃に酔った勢いで買ってしまった人体大図鑑の肝臓のページには肝臓の再生能力は高いということが書かれてあって、まあ悪くても切ったら大丈夫かなんて考えていたりもした。肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれているらしく、異常があっても症状として現れにくいことからそう呼ばれているらしい。僕の肝臓も沈黙を守りながら疲弊しているのかなと思いながら金曜日まで過ごして、平日でも19時まで空いている消化器内科を見つけて金曜の仕事終わりに向かった。「めちゃめちゃ高いんですわー」と神妙な面持ちで病院の先生も言っていてとりあえずもう一度検査してみたところ、数値は激減していた。片方は正常範囲に戻ってもう片方はまだ倍くらいだったもののまあこれだけ下がってたら大丈夫でしょうということで、念の為来月もう一回検査をするということで終わり。先生も不思議そうにしていた。「この高かった結果は闇に葬ることになりますが」なんて言ってた。葬るなよ。牡蠣食べませんでしたかとかウイルスに感染するようなことはありませんでしたかなど聞いてきたけれどどちらも当てはまることはなくお互いに首を傾げていた。なにはともあれ、健康であったしドラムも叩けるのでよかった。今日も元気に酒を飲んでいる。

 秋頃から自炊が復活して、新しい職場になってからは弁当を持っていき始めたので本格的に自炊をしている。大学の頃に友人たちがくれた弁当箱を引っ張り出して使っている。齢26にしてシロクマの顔が印刷された弁当箱とオムライス柄の保冷袋とはこれいかにと思いつつ、まあ嬉しい思い出だしねということで毎日朝に詰めて持っていっている。変わり映えのない中身ではあるがお昼は毎日少し楽しみ。たーまーにーはなーれなーいことしよーうマリネ作ってみよーうと口ずさみながら作ったマリネが非常においしくて、最近は週末にマリネをどっさり作って弁当と晩御飯のおかずにしている。野菜が美味しい。大根が美味しい。チーズもおいしいけれど日を追うごとに溶けてしまうのでどうしようか。

 冬から春にかける時間の中で秋みたいな瞬間ってあるんでないのと思いながら気にしてはいたものの寒くて冬だったし暖かくて春だ。でも先月の終わり頃、通勤時に渡る川に気嵐が発生していたのはもしかしたら秋みたいな瞬間だったのかもしれない。

 

 少し前に詩人の大崎清夏が話をしているのを聞く機会があり、素敵な人だなあと思ってそれから詩集を読んだりホームページやnoteをみたりしている。新刊が少し前に発売されてちょうどその日に京都にライブを見にいっていたから次の日に京都の本屋で自分の誕生日プレゼントがてら買って帰ったりした。ホームページに載っていた「私は思い描く」という詩を先々週の土曜日に読んでいてその中の「私は思い描く、逃げのびたあなたの心を」という一節が、

 友達がいるにはいるが来る日も日記を書いているからあれはいつだったっけというのが割とわかってしまう。確かそうな気がしているが全然そんなことはなく地面がないところに立っていて踏み出した足がどこかにつくまでも、振り返ってからまた戻る間にも瞬間の最小単位でうつろい続けていて全て不知の現在である。慌てて先を憂いて今を知らない。疲れて眠りたい夜に汗だくで目覚めて渋々着替えてしまう夜は時々訪れてしまう。まだ一ヶ月だから。言い訳しながら今日も元気に酒を飲んでいる。嘆いて捨て垢を作って何か呟いていたあの頃の高校生は?覚えたての最後のうたを弾いている。ばちあーたりぼくはこんなひも、のんべんだらりとしている。