4/15(土)

 雨の境目に立ち会ったことはありますか。僕は二回だけあります。一度目は中学生の頃、部活の練習で中学校から5キロくらい離れた河原にあるテニスコートに走って行かされた。そこで練習をし終えてから片付けをしていた時のこと。コートの外に飛んでいったボールを拾いにいった時、雨の匂いがしていた。雨のことなんて降っている時の匂いや降った後の湿った空気とぬかるんだ地面くらいしか知らなかった。そういえば最近近所の子どもがこれ雨上がりってやつだねと言っていて母親に褒められていた。そうだねよく知っているねと母親。雨上がりの新鮮な感覚、さぞ瑞々しいことだろう。おばあちゃんは明日雨が降ることを知っていた、農家のおばあちゃんは天気のことに詳しかった。真似して雨の兆しを感じ取ろうとしていたけれど、むむこれは明日雨かなと思った次の日にはそう考えたことを忘れていて結局何も知らないままだった。風が強く吹けば雨が降るんだったっけな、学校の渡り廊下を歩きながらその隙間に考えては渡り終える頃には忘れていた。

 雨の匂いがしていた。ボールを拾いながらおばあちゃんや雨のことを思い出して、むむこれは雨だなと天気に詳しいおばあちゃんがいるという優越感にひたひたの真似事をしていると雨の音が聞こえてきた。しかし濡れていない、降っていない。むむ?はてなが浮かぶ頃には河原の開けた地面が雨の音と共に向こうからどんどん濡れてきている。雨が、そう思った頃には濡れていた。雨足のつま先に触れていた。

 二度目は最初の職場の街に住んでいた時のこと、家から歩いてどこかに向かっていた。どこに向かってたんだっけ、休日だったような。依然として雨の予兆を知ることはなく、天気のことは目覚まし代わりのテレビのニュースによって確認していた。アパートを出て新幹線が通る高架下を潜り抜ける時、少し向こうの水たまりに波紋が広がっていた、これはあの時と同じやつだ!ざー、雨足は高架をあっというまに駆けていった。

 中学生の頃の同じ部活の友達と一度晩御飯を共にしたことがあった。その時の料理が白身魚のフライで、タルタルソースが自家製だった。我が家のことしか知らない中学生なのでいつものように美味しく食べていたが、後で聞いたところによるとそのタルタルソースがとてもおいしかったと友達が言っていたらしい。きゅうりが入っているのがポイントだとお母さんに力説していたそう。タルタルソース、きゅうり入っていたらおいしそう。ピクルスが入っているのが好き。どこかの居酒屋料理についていたタルタルソースにピクルスが入っていておいしかった。最初の職場の街に住んでいた頃、アパートの近くの居酒屋に入った時に出てきた突き出しのピクルスがすごく美味しくて、これはなんですかと聞いたらオリーブのピクルスだった。誰かにそれを話したら、ピクルスではなくてそれを聞いたことに驚かれた。確かに。社交性の低さは酒によって補われる。いつかみたKOTORIのライブのBGMがすごくよくて、終わった後にあれ誰が作ったんですかと物販の人に尋ねたらボーカルの人らしくて、少し話した。酒によって補われた。みんなほろ酔いなら争いは起こらない、なるほど確かにな〜と頷いている。

 タルタルソースが食べたくなったのでピクルスを作った。オリーブはないけれど玉ねぎがあったので細かく切って酢に漬け込んでいる。明日ゆで卵を作ってタルタルします。鮭があるから焼いてつけて食べよう。おいしそう。